俳句の庭/第3回 「雪椿」に乾杯!! 小島 健

小島 健
1946年新潟県生まれ。俳人協会常務理事、日本文藝家協会会員、「河」同人会長。NHK学園専任講師。石田波郷門・岸田稚魚、角川春樹に師事。句集に『小島健句集』他。著書に『大正俳句のまなざし』(NHKラジオ講座テキスト)『いまさら聞けない俳句の基本Q&A』他。これまで「毎日新聞」「東京新聞」の俳句時評、「NHK俳句」等連載執筆。NHK「俳句さく咲く!」に1年間出演。俳人協会新人賞、角川春樹賞等受賞。
 ♪ 花は越後の~ 花は越後の雪椿 ♪
 さて、皆さん、この曲、ご存知でしょうか? 越後・新潟出身の歌手、小林幸子さんのヒット曲「雪椿」!(星野哲郎作詞)
    いわ走る水脈みおれゆく雪椿      石沢蟹城子
 おや? 上句は早春の雰囲気? そうなんです、私は長い間誤解していました。雪椿は冬椿や寒椿の親類で、冬季、雪にもめげずに懸命に咲く椿と!
   ところがですね。雪椿は歳時記的には、何と「春」の部に分類されています。つまり、雪椿は椿の一種類で、春の季語! ああ......。雪椿は東北・北陸の深雪地帯の山地の四月~五月頃に咲く花。雪解け後に開く山茶花に似た赤い花、ってわけです。
 意外と雪椿の例句は少なく、ならば一句と......。
  忍耐や花は越後の雪椿
 だめだ、こりゃあ! 幸子さんの歌の盗作だね。
  ぶあつうて越後の山や寒椿       小川軽舟
  赤き実と見てよる鳥や冬椿        大 祇
 こちらは寒椿、冬椿。前句、分厚い越後の山は雪国に住むと肝を据えた人々の心情が重なります。後句、冬椿は時としてかようなフェイントもかけます。「ばかだねえ」と笑う中に、優しい憐憫の情も窺えましょうか?
  一つひとつ雪を窪めて落椿      石垣青葙子
 上句は春の椿を雪とともに詠み込んだ作。ウーン、その観察力の確かさよ! 赤と白の鮮やかな色彩感覚と構図にも、大きな拍手!
 さあ、皆さん、雪椿や雪に関する椿のように、何事にも耐えて花を咲かせましょうね。まずは雪椿に乾杯!