今月の俳句

俳句カレンダー鑑賞 6月
竹皮を脱ぐ一枚も散らかさず 西山 睦

 〈竹皮を脱ぐ〉そのものを見つめて、そのままをすっきりと詠み、映像に過つことはない。初夏の竹林の静寂を感じる。
 作者西山睦は、阿部みどり女から続く「駒草」4代目主宰、「写生に心を溶け込ませ真実を詠む」ことを信条とする。
 竹皮が散らかっていない事実を記したのではない。散らかさないことを描いたのである。
 竹が皮に保護された竹の子として地上に現れ、〈竹皮を脱ぐ〉成長期を迎えたとき、竹の散らかさない力を感じた。成長のために脱がなければならない定めとそれに抵抗する力の相克を見たのである。「散らさず」という自動詞でなく、「散らかさず」の他動詞に、その意思が見てとれる。
 人間の反抗期のような成長過程の微妙な矛盾を自然界に見たのではないか。平明にして深みのある句である。(平石 弓夫)
竹皮を脱ぐ一枚も散らかさず

西山 睦

 社団法人俳人協会 俳句文学館578号より