俳句の庭/第21回 鳥が苦手な訳 德田千鶴子

德田千鶴子
俳句結社「馬醉木」主宰。一九四九年、産婦人科医の祖父に八王子で取りあげられ生まるる。二〇一二年、秋櫻子、春郎に継ぎ三代目主宰に。 句集に『花の翼』。編著に『水原秋櫻子句集 群青』他三冊。

 鳥が苦手です。中でも鶏がこわい。きっかけは小学三年生の時。家で鶏を飼っていました。雨上りの午後、下校して赤い傘をぐるぐる回しながら庭に入ると、鶏が放されていたのです。アッという間に鶏が集まってきて、中には五メートル近く飛んできたのもいて、滅茶苦茶に突つかれました。こわかった!              

 夏、蟬取り名人の祖父が、捕まえた油蟬の翅の下に糸を通して、自由に飛ばして遊ばせてくれました。しばらく遊んだ後、私は窓脇の木に糸を結びました。たいした間もなく、尾長が飛んで来て、蟬を食べてしまったのです。凄いショックで、蟬の鳴き声が耳に残って、それ以来鳥がこわくなりました。勿論鳥にとっては当然の事でしょうが、糸をつけたまま枝においた自分の甘さを悔やみました。

 小鳥は可愛いです。黄鶲や金翅雀、連雀や花鶏。家の庭には目白の為に餌も置いてあります。でもやはり苦手。鶏が出てくるテレビ画面には目を瞑ってしまいます。

 祖父は神田の家に大きな鳥小屋を設けるほど、鳥を愛しました。野鳥の会の中西悟堂氏と一緒に、富士山麓で野鳥観察をしております。自然観察を進めたく、季語を正したい思いかと思います。

   ほととぎす朝は童女も草を負ふ 秋櫻子

 私も苦手ではいけないと、幾度か観鳥会を試みました。「じゃあ、焼き鳥とか食べられませんね」と聞かれると「イエ…頂きます」。何とも私の矛盾です。