俳句の庭/第10回 離島の花 福永法弘

福永法弘
昭和三十年、山口県生まれ。 松本澄江、有馬朗人に師事。句集『福』、エッセイ集『俳句らぶ』、『北海道俳句の旅』、共著『大歳時記』、『女性俳句の世界』や小説など著書多数。小説『白頭山から来た手紙』で第3回四谷ラウンド文学賞受賞。「天為」同人会長、「石童庵」庵主、俳人協会理事、俳句ユネスコ無形文化遺産登録推進協議会理事。京都ホテルオークラ代表取締役社長。

対馬の友人から「日韓関係悪化で韓国人観光客が全く来なくなり、対馬経済は壊滅的」と聞かされたので、一肌脱ぐべく、各地の俳句仲間など20人を誘い、対馬吟行ツアーを企画したのは、昨年の11月のことだった。日程を半年後の今年5月下旬にセットし、待ち遠しく指を折っていた。ところが、新型コロナウィルスの猛威により、県を跨いでの移動は自粛せよとの国からの要請もあって、中止せざるを得なくなった。
また、感染リスクから句会を開くこともままならず、「せめてWEB上で、対馬に行ったつもりになって句会だけでもしよう」と、東京、富山、京都のメンバー7人がZOOMで繋がり、パソコンによる「行ったつもりのWEB吟行句会」を催した。出句は季節を問わず対馬ゆかりの句でOKという緩い縛り。かくして、テレビやガイドブックなどから仕入れた対馬の自然と歴史に関する知識を踏まえ、羊歯、青蔦、浦島草、山百合、山法師などを季語とする句を出し合ったのだが、対馬に行った経験のある者が一人もいないこともあってか、隔靴掻痒の感無きにしもあらず。句会の最後に「コロナが収まったら必ず対馬に行こう」と誓い合ってWEB画面を消した。
ヒトツバタゴの世界最大の群生、対馬にのみ自生するツシマギボウシやハクウンキスゲ、朝鮮半島と対馬にしか咲かないナンザンスミレなどを句に詠み込むのは、いつか対馬で実物を目にしてからのお楽しみである。