俳句の庭/第22回 庭雀 仲村青彦

仲村青彦
【略歴】昭和19年千葉県木更津に生まれる。昭和56年「朝」主宰・岡本眸に師事。平成29年「朝」の終刊により「予感」を創刊する。「予感」主宰。俳人協会理事。句集に『予感』(俳人協会新人賞)『樹と吾とあひだ』『春驟雨』『夏の眸』、評論に『輝ける挑戦者たち―俳句表現考序説―』(俳人協会評論賞)。

 きのうの仏壇のご飯を洗って庭に撒く。山鳩が来る。鶇が来る。アカハラが来る。セキレイが来る。鵯と椋鳥がかち合うと喧嘩になる。四十雀は地面に降りてこない。雀は二、三〇羽の集団で現れ一〇秒ほどついばんで一斉に飛び去る。
 だが、桜の頃の雀はもう群をなさない。二、三羽あるいは四、五羽で現れ、半日庭にいる。藤蔓に止まっては揺れ、柿の木に移って群れて鳴く。そのうち雀たちは、飯粒を咥えて北へ西へ飛んでいく。山鳩が現れて嘴の飯粒を足で落としながら夢中に食っているころ、戻って来てはまた咥えて飛んでいく。わが家の軒が台風でやられてから、どこに巣が移ったか、分からない。
 ゴールデンウイークが過ぎたころ、親雀と一緒に子雀がやって来る。子雀はたいがい親よりふっくら太っている。羽をばたばたさせて餌を求める。親は飯粒を拾って口移しにする。子雀はまたチュンと鳴いて羽をばたつかせる。親雀はせわしない。親が飯粒探しに後向きになると、子雀は自分の近くの飯粒をついばむ。が、親雀がふり返ったとたん〝ぼくまだひとりで食べられない〟とでもいうかのように羽をばたばたさせ、時には松の下枝に移って〝ここに持ってきて〟とチュンチュン催促する。
 芋の畝で穴を掘っていた雀たちは、午后のティータイムに現れて、硝子戸をコツコツ突く。ホバリングして硝子戸を覗き込むものもいる。蜆蝶を捕らえる雀はもう子雀を連れていない。