俳句の庭/第87回 楸邨の川 佐怒賀直美
![]() |
佐怒賀直美 昭和33年茨城県古河市生まれ。昭和57年埼玉大学学生句会に参加、松本旭に師事し「橘」に入会。大学卒業と同時に「橘」の編集に参加、編集長を経て平成27年「橘」主宰を継承。元高校教諭(平成21年50歳を機に自主退職)。俳人協会理事・俳人協会埼玉県支部事務局長。句集『髪』『眉』『鬚』『心』など。「秋」主宰・佐怒賀正美は実兄。 |
埼玉県春日部市は、加藤楸邨と水原秋櫻子との出会いの地である。
昭和4年、旧制粕壁中学校(現春日部高校)に赴任した楸邨は春日部で新婚生活を開始し、昭和6年には同僚の勧めで句作を始め、楸邨との出会いに至るのである。
その春日部市には古利根川が流れ、楸邨は良く妻と二人でこの川辺を散歩していたとのことで、また時には秋櫻子とも連れだって歩いていたようである。
古利根川とはその名の通り〝古い利根川〟ということであるが、「春日部付近の古利根川は、かつての利根川であり、上流からの農業排水路であり、下流への農業用水路でもあり、用水を確保するための貯水ダムでもありました。」(「春日部市教育委員会」ブログ)ということである。
春には岸辺の桜並木も見事で、江戸時代の上喜蔵河岸跡には当時の石垣が残り、川沿いの碇神社では樹齢600年と言われるイヌグスを見ることができる。
一昨年、埼玉県支部では〝花と緑の春日部吟行会〟を開催したが、駅周辺にも見所も多く、日帰り吟行にもってこいの場所であり、楸邨を偲びながらのんびりと川岸を散策するのも心地良いもので、筆者は勝手に「楸邨の川」と名付けて興じているのである。
残暑いま楸邨の川満々と 直美

春日部市を流れる古利根川