俳句カレンダー鑑賞 平成25年10月
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古九谷は瀟洒な色使いと図柄が特徴の色絵磁器で、17世紀に興り、約50年後突然廃窯となった。
その後再興された九谷焼に対し、古九谷と称されている。
現在蔵元から新酒が出されるのは2月頃だが、昔は自家で新米をすぐに醸造して酒造りをしたので、新酒は秋の季語となっている。
この句は「古九谷」と「新酒」の取り合わせが斬新である。作者の美意識によって響き合う、古きものと新しきもの...。
瓶子の手触りに秋の気配が感じられ、その美しい彩色は深まり行く秋を予感させる。
注がれる今年酒が、器を満たしてゆくときの新酒の色と艶、香りがその音とともに立ち上がってくる。饗されるはれの場が想像される。
新酒の味はまた格別。主客の語らいの清韻も尽きないことだろう。
豊穣の秋の訪れを、五感を通して美しく味わうことができる格調高い一句である。(佐藤美恵子)
古九谷の瓶子にそそぐ新酒かな
伊藤敬子公益社団法人俳人協会 俳句文学館510号より