俳句カレンダー鑑賞 平成25年7月
- 俳句カレンダー鑑賞 7月
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句集『天年』所収。平成18年の作。
「清水」といえば、深山や平地の岩間のようなところから湧き出て流れる動きを感じさせる。
それまでの時間的経過やそこへ誰と来たかなど全て省略し、読者の想像に任せているのがよい。
私は平成5年の夏、縄文杉をこの手で確かめようと、木材業者の仲間と屋久島の原始林へ登ったことがある。険しい崖道を辿る日帰りのコースであったが、途中の清水で喉を潤したことを昨日のように思い出した。
下戸の作者の「利酒のやうに」とは、酒への憧れの感情が心の底にあり、清水を味わう。その行為を思いやったのだ。
〈啄木鳥や落葉をいそぐ牧の木々 秋櫻子〉の例もあるように、違う季節の季語を効果的に配合した、清新な叙情句である。(内藤 廣)利酒のやうに清水を含みけり
関森勝夫
公益社団法人俳人協会 俳句文学館507号より