俳句カレンダー鑑賞  平成25年5月

俳句カレンダー鑑賞 5月
飛ぶ鳥を絶やさざる空更衣 大岳水一路

 一読、天を仰いで静かに佇まれる師の姿が目に浮かぶ。
 更衣の季節は万物生気に満ち溢れ、全てが眩しく輝いている季。この日も輝くばかりの美しい空だったのだろう。
 大空を自由に飛び回る鳥たち。それは鳥の生の歓びであり命の輝きだ。その命と呼応する作者の命。「更衣」には作者の清新の気が漲っている。
 この句の眼目は鳥の絶えざる空ではなく、「鳥を絶やさざる空」という表白にあると思う。
 そこには大空を知ろしめす者、目に見えない大いなる者の影が感じられるのである。
 この表現には、自然に対する畏敬の念が籠められているのではないだろうか。
 師は常に「自然に対するとき、自然に学ぶという謙虚さが大切」と私たちに説かれる。
 5月の空を仰ぐとき、思い出す一句である。(米原 淑子)
飛ぶ鳥を絶やさざる空更衣

大岳水一路

公益社団法人俳人協会 俳句文学館505号より