俳句カレンダー鑑賞 平成25年9月
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眠りても覚めても曼珠沙華の中
押野 裕長雨の夏のあと、記録破りの酷暑の夏のあとであっても、時を違えずに彼岸の頃に咲く曼珠沙華。昨日までは只の叢だとしか見えなかった処に、突然茎高く真赤な花を咲かせる曼珠沙華。
もの思う初秋の頃に咲くからなのか、彼岸花という別称がそう思わせるのか、曼珠沙華の花を見ると決まって人の生死=人生を思う。
眠ることが死だとすれば、覚めていることは生。血のように赤い花の色が、その思いをより深くさせる。人は「生まれ、時に結ばれ、時に産み、そして死ぬ」。確実なのは、生まれたら必ず死ぬということ。連綿と続くこの繰返しが、地球を、人類を形成してきたのだ。
作者はこの春結婚された。自作の曼珠沙華が象徴することを、改めて深く思っているに違いない。(東徳門百合子)公益社団法人俳人協会 俳句文学館509号より
