俳句カレンダー鑑賞  平成31年11月

俳句カレンダー鑑賞 11月
風に乗り風を隼超えて飛ぶ 石井いさお

 作者は昭和51年から18年間山口誓子に師事し、平成16年に『煌星』を創刊し、主宰として現在に至る。山口誓子の志を継ぎ「事象に対し感動を第一に、新想深意を以て、本質に迫る」をスローガンに結社を育成されてきた。氏の句にはこのスローガンを遺憾なく発揮している句が多く、鉈で、または逆に鋭利な剃刀で本質を把握し、真髄に迫る句を詠み一読して強く胸を打つ作品が多い。
 掲句は、作者の第3句集『水の星』の第2章若布刈舟(平成18年~19年)に収載されている。隼は飛翔が極めて早く、古来鷹狩に用いられた。飛翔の早い姿を「風に乗り」と更に「風を超えて飛ぶ」と、飛翔の早さの本質を簡潔明快に詠み切っており、なるほどと爽やかな気分で共感できる。俳句の妙味を味わえる一句といえる。(平野 透)
風に乗り風を隼超えて飛ぶ

石井いさお

 社団法人俳人協会 俳句文学館583号より