俳句カレンダー鑑賞  平成31年6月

俳句カレンダー鑑賞 6月
夏至の日の草の匂の手を洗ふ 古賀雪江

 夏至の日の北半球では太陽の南中高度が最も高く日中の時間が一年中で最も長い。
 この頃、自然界では万物のいのちのエネルギーがその沸点に到着する時期で野も山もむせかえるような生の匂に満ちあふれている。雜草なども、引いても引いても怯まず逞しく生えつづけ、その勢いは怖ろしいほどで自然の生命力をしみじみ感じさせる。
 そんな日、作者は庭の草むしりをした。そして手を洗っているのだが染みついた草の匂はなかなか取れない。指先も草の灰汁で黄色くなっている。手を洗いながら、ふと今日が夏至であることに気付く。
 「俳句は日常のうた 日々のつぶやき」といわれているが、ふとしたつぶやきが、一句の形となった。
 「夏至」の日の「つぶやき」の詩である。(岡田 文子)
夏至の日の草の匂の手を洗ふ

古賀雪江

 社団法人俳人協会 俳句文学館578号より