俳句カレンダー鑑賞 平成30年10月
- 俳句カレンダー鑑賞 10月
-
第2句集『月の匂ひ』所収の一句である。
愛媛県東温市にある皿ヶ嶺連峰の麓に居を移して、もう10年程になられただろうか。お住まいの小高い丘の上からは、豊かに稔れる道後平野、その先の瀬戸内海までが一望に見渡せる。
ついこの間まで黄金に輝いていた稔田もすっかり収穫を終え、大地が急に軽くなったような、空がこんなにも高かったのかと改めて感じる一日。 これから冬へ向かおうとする刈田には、柔らかな日ざしが隅々まで行き届き、こころもち冷たく感じる風さえも、どこか心地良く思える。
掲句には、穏やかな晩秋のひとこまが鮮やかに詠み込まれている。
大地にどっしりと根を下ろした豊かな感性、大らかな心。いつも不思議な魅力に包まれた句に思わず引き込まれるのである。(和泉 厚子)刈田村日ざしは風にとけこんで
江崎紀和子
社団法人俳人協会 俳句文学館570号より