俳句カレンダー鑑賞  平成30年5月

俳句カレンダー鑑賞 5月
木漏れ日に力ありけり衣更衣 櫂未知子

 木洩れ日というとどこか優しいイメージだが、掲句では「力ありけり」。更衣が済み、白服、あるいは袖の短い服を着て出掛けたとしよう。たまたま木陰を通れば、多くの人が中七の措辞に納得するはずだ。
 木洩れ日が服に当たれば眩しいし、また肌にさせばその力強さが実感されよう。心地よい風が吹き、葉擦れが聞こえて来るかもしれない。葉の揺れとともに木洩れ日は躍動し、その生き生きとした様子こそが「力ありけり」なのではないか。
 更衣という生活の中での行為が、自然の運行と連動していることがよくわかる。更衣をする時期は日差しが夏らしくなる時期と重なる。また、服の明るさ、日差しの強さ、梢の緑という色彩的構成も美しい。まさしく「更衣」が掲句にとって完璧な季語なのだろう。 (小山 玄黙)
木漏れ日に力ありけり衣更衣

櫂未知子

 社団法人俳人協会 俳句文学館565号より