俳句カレンダー鑑賞  平成30年6月

俳句カレンダー鑑賞 6月
さなぶりを終へ啄木の村しづか 角川春樹
さなぶりを終へ啄木の村しづか

角川春樹
角川春樹主宰は魂の一行詩について次のように述べている。
 《 魂の一行詩とは、日本文化の根源にある「いのち」と「たましひ」を詠う現代抒情詩のことである。古来から山川草木、人間を含めあらゆる自然の中に見出してきた〝魂〟というものを詠うことである。
 一行詩の根本は文字通り一行の詩でなければならない。(中略)
 ただ詩といっても五七五の定型に変りはない。五七五で充分に小説や映画に劣らない世界が詠めるからである。また秀れた俳句は、秀れた一行詩でもある。》
 掲出句は、「さなぶり」という「晴」に対し、「村しづか」という「褻{{け}}」を配した詩の真実を伴うリアリティある作品。
 角川源義の提唱した二句一章の「もどき」の実例。実に俳諧味の帯びた一句である。
 昭和61年6月石川 啄木のふるさと岩手県渋民村を吟行した折のもの。句集『一つ目小憎』所収。 (佐川 広治)
 社団法人俳人協会 俳句文学館566号より