俳句カレンダー鑑賞 平成30年5月
- 俳句カレンダー鑑賞 5月
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平成9年作。『近所』所収。鮮やかに浮き出す鯖の斑の青さ、銀色のはちきれんばかりの身。祭りに活気づく人や街が瞬時に見えてくる。更に「り」の続く韻律に心が弾み、祭りの高揚感が増す。 自解によれば、この祭りは福岡赴任中の博多祇園山笠。鯖は鯖寿司ではなく「ごまさば」。真鯖の刺身を青葱や胡麻、醤油だれで和えた福岡ならではの名物料理である。千葉で生まれ育った作者。祭りの熱気と共に刺身で食べる鯖にも衝撃を受けただろう。つい最近まで太平洋側で獲れる鯖にはアニサキス等の問題があり生は敬遠されてきたが、特許製法が開発され食べられるようになった。私は正月に銚子で生の鯖漬丼を食べた。青魚の臭みもなくねっとりした旨味が口に広がり、また食べたくなる味。今度は博多祇園山笠に出向いて「ごまさば」を食したい。
(大西 朋)鯖の斑の淋漓と祭来りけり
小川軽舟
社団法人俳人協会 俳句文学館565号より