俳句カレンダー鑑賞  平成30年2月

俳句カレンダー鑑賞 2月
白梅や声に乗せたる李白の詩 関森勝夫

 掲句は梅の古木で名高い寺での所感という。
 句中の李白の詩は、そこに聞こえてきた詩吟の声とも解釈できるが、私は白梅を見て無意識に小声で吟じられた作者の声だと受け止めたい。
 李白には、作品の表す世界の変幻自在ぶりや、はっきりしない部分のある生涯から全体像が摑みにくく、底知れぬものを想像させる一面がある。
 一方白梅には、華やかな印象を含む紅梅と違って、白という目に見えるものの奥に内包された、気品、毅然とした姿を想像させるものがあり、両者は深いところで見事に響き合っている。
 古典は作者のご専門の範疇と思われるが、内外の幅広い作品に精通し、専門的な知識がなければ白梅と李白の詩の取り合わせの句は生まれなかったと思われ、作者の日頃の弛まない研鑽に驚くばかりである。 (鈴木 金佳)
白梅や声に乗せたる李白の詩

関森勝夫

 社団法人俳人協会 俳句文学館562号より