俳句カレンダー鑑賞 令和7年12月
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暁闇の冷えを纏ひて神鵜翔つ
能村研三氣多大社の神事「鵜祭」の歴史は古く、少なくとも平安時代に遡る。石川県七尾市鵜浦{{うのうら}}で捕獲された海鵜はその時点で鵜様(神鵜)となる。鵜籠に入れられた鵜様は3人の鵜捕部{{うとりべ}}に担がれ「鵜様道中」が始まる。七尾市で1泊、中能登町良川の鵜家総本家で2泊目、3日目の夕刻、羽咋市の氣比大社に到着する。
浄められた鵜様は、12月16日未明、燭〓一対の灯る暗闇の神殿に放たれ、その翔び方で来年の吉凶を占う。凍える拝殿では多くの参詣者がその一瞬を見守る。
作者は平成28年拝殿の一番前で身動ぎもせずこの神事を見詰めていたが、その体験を伝統ある神事の厳かさと神鵜が翔び立つ瞬間を捉えた躍動感溢れる掲句に昇華させた。
令和元年10月20日、「沖」創刊50周年記念として氣多大社の境内にこの句碑が建立された。生きた鵜を神として崇める神事は外になく「氣多の鵜祭の習俗」は国の重要無形民俗文化財に指定されている。
(道端 齊)社団法人俳人協会 俳句文学館655号より
