俳句カレンダー鑑賞  令和7年6月

俳句カレンダー鑑賞 6月
六月の風はしろがねポプラの木 鈴木しげを
六月の風はしろがねポプラの木

鈴木しげを
 この句は今まさに六月の風が「しろがね」となって目前のポプラの木を吹きわたっているのだという感慨を一情景として詠まれたものであるが、都会的な佇まいをもつ一句と言える。
 その都会的諷詠が波郷の〈バスを待ち大路の春をうたがはず〉の句を連想させるが、その詠み口はむしろ麥丘人調と言えなくもない。この一句に師系というものの不思議さを感じざるを得ない。
 波郷に学びその韻文精神に忠実に研鑽を積まれたしげを俳句の特徴はと言えば「切れ」を重んずるところにある。掲句においても下五の「ポプラの木」の言い切りに事は証明されている。
 しかしながら師の作品には、波郷俳句特有の境涯性の影は薄く、敢えていうならば境涯性や時局、世間の憎愛から一歩退いたところに素材を求めているようにさえ思われるのである。掲句はそうした風雅で味わい深い、しげを俳句本来の作風の現れた一句と言えるのではないか。
(佐藤 安憲)
 社団法人俳人協会 俳句文学館649号より