俳句カレンダー鑑賞 令和7年7月
- 俳句カレンダー鑑賞 7月
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実に不思議である。景を伝える具体的な言葉はどこにも見当たらぬまま、「須臾」の今が「永遠のやう」と時間軸に乗り未来へそして過去へ去来する。そこへ明るさをもつ季語「夏休み」が飛び込んできた瞬間、広場や公園で一心に遊ぶ子供達の姿や賑やかな声が眼前の景として浮かび上がり、納得と共感に変わる。
単なる休暇「夏休み」が読み手の個々の心に宿る風景へ瞬時に置き換わるのは季語のマジックだろう。
作者が見つめているのは、子供達が織りなす無垢の小世界。お子達を育てられた母の愛がどことなく滲む。一方でその小世界に子供だった頃のご自身も入り込んでいるような感覚も。
作者は平成27年より「橡」主宰。亡き師堀口星眠は御父上。自然を友とし、創意工夫、詩情最優先。先師の教えが此処にある。
(福元 和雄)須臾の間が永遠のやう夏休み
三浦亜紀子
社団法人俳人協会 俳句文学館650号より