俳句カレンダー鑑賞  令和7年8月

俳句カレンダー鑑賞 8月
草の市水の匂ひに暮れにけり 安田のぶ子

 掲句は平成26年の作。作者は長崎県出身。母上の新盆の折の句である。
 故郷長崎の盆花は千日紅で鬼灯と一緒に買い、白提灯も揃え新盆を迎えたと聞いている。父上のあと母上も亡くなられた作者は仏壇を預かることになり、草の市での盆用意で水の匂いを感じながら、今後の暮しに思いを馳せておられた。
 現在、作者は第9代の「同人」主宰。「同人」は大正9年大阪で青木月斗が創刊主宰、令和2年で百周年を迎えた歴史ある俳誌である。作者は令和4年9月に主宰になられ、「句は人なり」をモットーに結社運営の重責を担われている。
 第一句集『父の肩幅』(平成元年刊行)に続き本年2月に35年振りに第二句集『母の窓辺』を上梓された。母上に捧げたいと願ったこの句集に掲句も収められている。
(別所 康充)
草の市水の匂ひに暮れにけり

安田のぶ子

 社団法人俳人協会 俳句文学館651号より