俳句カレンダー鑑賞 令和7年8月
- 俳句カレンダー鑑賞 8月
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何とも仄々として郷愁をそそり、旧き良き時代の日本の原風景を彷彿とさせる句である。我が国の村の数は、昭和28年の昭和の大合併前は7600あったが、今では180に激減した。この「村ごとに」の村は、昭和の大合併前の村の単位を指しているのであろう。
土俵、即ち相撲は祭等の神事と関係が深く、また心技体を鍛える国技として奨励されてきた。一昔前まではどの村にもたいてい土俵があったが今では少数派である。この句からはお盆に都会から帰省した作者が、月影に浮かぶ母校、あるいは産土神社の土俵を眺めながら、村祭での相撲大会をはじめ、子供の頃の古里の記憶を思い返している情景が目に浮かぶ。と同時に壊れ行く農村集落のコミュニティーを嘆いている顔を彷彿とさせ、平明な表現ながら味わい深い。
(立花 慶舟)村ごとに残る土俵や盆の月
安原溪游
社団法人俳人協会 俳句文学館651号より