俳句カレンダー鑑賞 令和7年9月
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寿老人ほどの位に青瓢
加藤耕子秋になると、薄緑色をした青瓢が棚いっぱいにぶら下がる。瓢にも色々な種類があるが、掲句に詠まれたのは大長瓢簞という身丈が一メートル以上にもなる瓢であろうか。 作者は、棚に下がっている長い立派な瓢簞を目にしたのだろう。その姿に見入ってしまった作者。
その脳裏に浮かんだのが、七福神の一柱である寿老人の姿。長い頭に長い髭を蓄えた老人の姿をした神様である。もちろん、長いのは、頭や髭だけではない。寿老人は、その名のごとく長寿の象徴でもある。寿老人が連れている鹿は、千年の寿命を持つという玄鹿、不死の霊薬となる瓢簞を運び、不老長寿の桃を持つ。
そんな長寿の象徴である寿老人を連想させる青瓢。その姿を「寿老人ほどの位」と詠む作者自身も、今年94歳を迎えた長寿の人。眼前の長い青瓢の姿に、自らの人生を重ねているようにも思える。掲句は、世の長寿者、そして作者自身の人生への寿ぎの句でもあると思う。
(平戸 俊文)社団法人俳人協会 俳句文学館652号より