俳句カレンダー鑑賞 令和7年11月
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11月、境内は着飾った幼子を連れた七五三参りの家族で賑わっている。目を転じれば、晴れた空に、まさにぽっかりと大小の白い雲が浮かんでいるのである。うららかな冬日和、眼前の七五三の情景と併せて、雲もまた子連れだと捉えたことで大きな気息の景となっている。
七五三参りの当事者であれば、子供の衣装や機嫌に気をとられ、このような大局的客観的な句は生まれなかったのではないかと思う。かつて〈美しき母を見上げて七五三〉と詠んだ作者。自らも子を連れて家族で七五三参りをした佳き日のことが脳裏に浮かんでいたことだろう。
七五三で華やいだ子連れの人々を眼前にして、子連れではない作者が、一歩引いたどこか空虚な心持ちで雲を見上げている姿がそこにあるような気がする。平成30年、作者65歳の時の作。
(西宮 舞)ぽつかりと雲も子連れや七五三
田中春生
社団法人俳人協会 俳句文学館654号より
