俳句カレンダー鑑賞 令和4年10月
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動物園の広場だろう。秋になって日本に飛来した小鳥が、象の背を越えて広場に飛んできたという。平明な言葉で詠まれていて、句意も場面も明快である。
「象の背な」から始まる構成が巧みである。読者のイメージの中に、いきなり象の背を浮かび上がらせ、一気に作品世界へ引き込む。そののち広場が現れ、小鳥が飛んでくるというように、場面の展開に工夫が凝らされている。この工夫により映像的な一句になった。明るい詩情に溢れた内容と相俟って、童話の一場面を思わせる。
このように、単純明快に詠まれた句であるが、一句の構成には細やかな配慮がなされている。象や小鳥に向ける慈愛に満ちた眼差しと、俳句という詩形を生かす知性が絶妙に調和した一句といえるだろう。
(牛田 修嗣)象の背な越えて広場に小鳥来る
藤井圀彦
社団法人俳人協会 俳句文学館617号より