俳句カレンダー鑑賞  令和4年4月

俳句カレンダー鑑賞 4月
ローランサンの青き鳥なり囀れる ながさく清江
ローランサンの青き鳥なり囀れる

ながさく清江
 明るい4月の到来を告げる美しいブルーの色紙が目に飛び込む!そして言の葉は譜面に躍る音符のように囀りはじめる。
 作者は『自註現代俳句シリーズ』で「毎年の渡欧では美術館を巡るのが大きな楽しみだった。絵の中の鳥に囀りが聞こえるように囀る鳥にローランサンの鳥を感じた」と書かれている。
 20世紀前半のフランスで自身の美を真摯に追求したマリー・ローランサンは、解放され自立した女性の象徴とも言えようか。
 掲出句が詠まれたのは1975年。ローランサンの描く〝青き鳥〟の象徴性が鑑賞者の意識下の心象を呼び覚ますと同時に、当時の作者の〝わたくし〟的幸福感と瑞々しい感性による表現に忽ち魅了されてしまうのだ。
 前後して詠まれたのが〈衣紅きグレコのマリア五月来ぬ〉、作者の絵画への深い造詣と美意識が窺われることである。
 5年前に卒寿を軽やかに越えられ、猶しなやかな俳句人生を日々アップデートし続ける師。ながさく清江先生に乾杯!
(常盤 倫子)
 社団法人俳人協会 俳句文学館611号より