俳句カレンダー鑑賞 令和4年1月
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つくたびにひろがるみ空羽子日和
鷹羽狩行『十一面』収録、平成6年の作。鷹羽狩行には他に〈谷よりの声のここまで羽子日和〉(『月歩抄』)〈木場の材は一方に寄り羽子日和〉〈高きには凧のあらそひ羽子日和〉(共に『六花』)の「羽子日和」の作がある。
巷の喧騒も落ち着いて穏やかな新年を迎える中、高らかに音を響かせる羽根突きの様子にはそこはかとなく淑気が漂う。その由来は諸説あるが、奈良時代から正月の宮中行事として行われていた毬杖が、江戸時代に子供、特に女児の遊びとして定着したという。
掲出句は場所を限定しない(記憶の中の風景なのかもしれない)が、私は一月のどこまでも晴れ渡った青空の下の、どこかに江戸の風情、懐かしい雰囲気の残る東京の下町を思い浮かべた。ひらがなを多用した表記もゆったりとした印象を与え、青空の広がりがさらに強調されている。羽根突きを楽しみながら、羽根を突くたびに心も軽やかに、晴れやかになってゆくさまが生き生きと描かれた一句である。
(網倉朔太郎)社団法人俳人協会 俳句文学館608号より