俳句カレンダー鑑賞 令和4年6月
- 俳句カレンダー鑑賞 6月
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森川光郎は今年7月で百周年を迎える「桔槹吟社」の代表である。
96歳になる現在も桔槹の理念である「汲みいだす水は常に新し」の通りに若々しい句を作り続けている。
この句は一見俳句にはなりそうも無い題材の「束子」を光郎の目を通しひとつの詩を作り上げている。
今使ったばかりの束子からひたひたと雫が落ちている。何処に吊したのだろうか。外の洗い場か、それともその辺の木の枝か。その雫は光りの粒となり落ちていく。あたかも梅雨の山のように静かで穏やかである。
束子という生活感のある物と自然溢れる美しい梅雨の山とを取り合わせている。雫と梅雨の山の間に静かな時が流れる。やがて、梅雨の山を成してゆくのであろう雫の滴る音、光りから梅雨の山の発想である、その他は一切を排除して詩となった。
(江藤 文子)つるされし束子のしづく梅雨の山
森川光郎
社団法人俳人協会 俳句文学館613号より