俳句カレンダー鑑賞 平成29年7月
- 俳句カレンダー鑑賞 7月
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祇園祭ハイライトの山鉾巡行の中でも、辻回しは最大の見せ場である。
「辻回し」とは都大路の交差点で10トンを超える鉾を直角に方向転換させることである。
掲句は先頭を行く長刀鉾の最初の辻回しを詠んだものであろう。後藤比奈夫の〈東山回して鉾を回しけり〉が浮かぶ。
本来操舵性のない車輪の転換は、音頭方の合図で鉾を動かす曳き手の力技である。観衆も祈るように見守る。
作者は17音を「辻回し」までの8音と「祈り」以下の9音に配し、一気に読ませる。動と静の揺るぎない一体感。
祇園会が開始された貞観11(869)年は、陸奥国で巨大地震が起きた年でもある。以来、祭神牛頭天王へは疫病退散と天変地異鎮圧の深い祈りが捧げられてきた。その声なき声は、東北大震災を経験した我々の祈りと重なる。
第6句集『椅子ひとつ』所収(平成27年刊)
(米澤 響子)鉾の辻回し祈りを力とし
西村和子
社団法人俳人協会 俳句文学館555号より