俳句カレンダー鑑賞  平成29年5月

俳句カレンダー鑑賞 5月
須磨離宮もとほり薔薇の香に酔ひぬ 小路智壽子

 神戸の須磨離宮公園には、小路紫峽(前主宰)・智壽子(現主宰)の師である阿波野青畝の句碑があり、「ひいらぎ」会員にとっては格別の吟行地となっている。
  掲句の「もとほり」は「めぐる」  「徘徊する」の古語。歴史ある須磨への挨拶として斡旋された。
 離宮公園には見事な薔薇園があり、現在180種、4000株あるという。その芳醇な香に包まれていると、実に幸せな気分になる。しかし、歩き疲れた身にはいささか応えもする。「香に酔ひぬ」は大袈裟ではなく、堪能した実感であろう。 「もとほり」まで詠み下し、下五への句またがりが、薔薇の香の堪能ぶりを効果的に表している。
 青畝の句碑を訪ねたり薔薇園を吟行したり、生前の紫峽主宰を中心にした吟行風景が偲ばれる。
(竹内 柳影)
須磨離宮もとほり薔薇の香に酔ひぬ

小路智壽子

 社団法人俳人協会 俳句文学館553号より