俳句カレンダー鑑賞 平成29年9月
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第5代加賀藩主綱紀は膨大な和漢典籍の蒐集や京都の「東寺百合文書」の補修整理に私財を投じるなど希代の学芸大名として名を馳せる。
能楽では、将軍綱吉の影響下に宝生流9世友春に指南を請い、藩内の能楽を一流に統一。いわゆる「加賀宝生」の礎を固めた。演能のための人材を確保すべく、御細工所の職人に調度品の制作・修理など美術工芸関係の本業に加えて、謡や囃子を兼務として義務づける。
城下町の金沢では「天から謡が降ってくる」と言われるほどに宝生が爛熟した。屋根葺きや植木職人まで謡曲を一節口ずさみながら仕事をする。
掲句は近年まで活性を保ってきた市井風俗を懐かしむ。季題趣味的な様式性に往古への郷愁を籠める詠法は、加賀人紫像氏の証しと言えようか。
(渡辺香根夫)爽やかや加賀宝生の小謡を
泉紫像
社団法人俳人協会 俳句文学館557号より