俳句カレンダー鑑賞  平成29年3月

俳句カレンダー鑑賞 3月
湯けむりをあけぼの色に楓の芽 青柳志解樹

 俳誌「山暦」平成20年4月号に初出。61歳の作。
 平成4年度第32回俳人協会賞の第8句集『松は松』に所収。
 栃木県で塩原温泉のある箒川渓谷を訪れた際に詠まれた句である。湯けむりが淡紅に黄みを帯びた色、すなわち曙色に染まり出すと、渓谷の底に連なる塩原温泉の夜が明ける。
 枕草子に「春はあけぼの」とあるように、この句でも曙という漢字を使用せず、平仮名で柔らかく表現している。
 箒川の両岸は、山紅葉が多く、錦秋の風景が絶品だ。しかし作者は、楓の新芽の淡紅色もまた美しいと感動した。  その感動の心から生まれたのが「あけぼの色」なのである。
 自然を尊び、自然に学ぶことを信条とする俳人ならではの作品と言える。(蓮實 淳夫)
湯けむりをあけぼの色に楓の芽

青柳志解樹

 社団法人俳人協会 俳句文学館551号より