俳句カレンダー鑑賞  平成29年8月

俳句カレンダー鑑賞 8月
朝顔や仕事はかどる古机 大峯あきら
朝顔や仕事はかどる古机

大峯あきら
 朝顔は身近にあり、いつでも見られて、変化も分かる親しみやすい花である。
 10時過ぎには凋んでしまう朝顔と共に早起きをし、今日の机に向かう。
 寸暇なく使われてきた古机は、先代から受け継がれてきたように思われる。坐せば古机と一体となり、何事もなかったように言葉が泉のように湧いてくる。作者にとって当り前の今日の始まりである。
 この静謐な時の中で、いよいよ明晰そのものとなる。咲き継ぐ朝顔は日々新しい。掲句の「古机」には、久遠の魂を感じることが出来る。
 平明な句の姿によって大切な普遍性、延いては暮らし方の理想をも考えさせられる。この句は、勤勉な人々によって〈古池や蛙とびこむ水の音〉よろしく膾炙されてゆくであろう。
 作者が僧侶であり哲学者そして俳人と記せば、膨大な仕事量などたやすく想像出来よう。
 紺や淡青色の朝顔を思い浮かべ、作者の分身のような古机の空気にあやかりたい。
 清浄な空気がもたらされたことによって、私も励まねばと思うのである。   (津森 延世)
 社団法人俳人協会 俳句文学館556号より