俳句カレンダー鑑賞  平成2年10月

俳句カレンダー鑑賞 10月
水天の果なきあはひ鳥渡る 鈴木貞雄

 渡り鳥は留鳥と異なり繁殖のため、あるいは越冬のためにしばらくを一定の場所で過ごし、再び元の場所へ帰ってゆく。因みに「鳥渡る」は秋、「鳥帰る」は春の季語である。
 平成29年秋、鷹の渡りに訪れた伊良湖岬の作。
 一句は、「鷹渡る」と限定せず「鳥渡る」の季語を用いることで、広く渡り鳥というものの宿命に情を通わせて詠んでいる。
 なかでも初五から中七への言葉運びには壮大なロマンが感じられ、空と海の間という意味にとどまらず、天地運行を司る神の導きによって、仲間を誘い合い、上昇気流に乗って憑かれたように渡ってゆく鳥の神秘が美しく詠い上げられた。
 そして渡り鳥を見送った後の「人間我」にも思いを致していることが余韻から伝わってくる。
(福神 規子)
水天の果なきあはひ鳥渡る

鈴木貞雄

 社団法人俳人協会 俳句文学館593号より