俳句カレンダー鑑賞  平成2年10月

俳句カレンダー鑑賞 10月
木の実落つかごめかごめの輪の中に 若林杜紀子

 一読セピア色の世界がひろがる。句の背後から懐かしい童歌が聞こえてくる。ある年齢以上の人なら様々な思い出が甦ってくることだろう。輪の中に落ちるものが木の実だということも、読者の心を森や林へと、そして遥かな郷愁へと誘う。
 回想から生まれた作品かと思ったが、最近深川公園で目にした実景らしい。園児が歌いながら遊んでいる景に出会い、今もこんな懐かしい遊びが生きていることに心惹かれて浮かんだ句という。
 作者の若林さんは「百鳥」編集部の要として活躍中の方で、その作風は決して浮つかず甘くならず実に基づいた強さを持つ。この句も地に足のついた作風に違わないものだったと納得。しかもこの作品の場合は、実景に基づきつつ読者を遥かな世界へ誘うところが、一段の魅力となっている。
(石﨑 宏子)
木の実落つかごめかごめの輪の中に

若林杜紀子

 社団法人俳人協会 俳句文学館593号より