俳句カレンダー鑑賞  平成2年6月

俳句カレンダー鑑賞 6月
海の風みかんの花に来て白し 高橋悦男

 海と蜜柑の花というと、子どもの頃に歌った「みかんの花咲く丘」の童謡を思い出す。その頃は、蜜柑の花の色が白だということなど知らずに歌っていたが、子ども心にもどこか懐かしさのこみあげてくる歌詞であった。
 歌詞のモデルとなった風景は静岡の伊東であるという。掲句の作者の故郷は伊豆下田であるから、同じような蜜柑山の風景を見ていたのだろう。夏になると、蜜柑山には白い小花が風に揺れて、降り注ぐ日の光に香を放つ。
 海の青と蜜柑の花の白。風そのものには色はないけれど、掲句はその風を詠いながら、風を通して一枚の風景画を見るような、鮮やかな色彩を見せてくれるところに心惹かれる。そして、「みかんの花に来て白し」という潔い断定が、実に心地よく、豊かに一句を響かせてくれているのである。(日下野由季)
海の風みかんの花に来て白し

高橋悦男

 社団法人俳人協会 俳句文学館590号より