俳句カレンダー鑑賞  平成2年7月

俳句カレンダー鑑賞 7月
島陰の真珠筏に夏の雨 増成栗人

 3年ほど前の夏、三重県の伊勢志摩方面へ出掛けた際の景の作である。島陰の真珠筏が印象深く作者の目に映った。
 伊勢志摩は真珠養殖発祥の地。アコヤ貝による真珠養殖は三重県伊勢志摩以外では愛媛県宇和海、長崎県対馬、熊本県天草の4県で90%を生産している。
 真珠養殖には、波の穏やかな漁場、海水の温度などの条件が必要。志摩半島英虞湾は、入り組んだ海岸線に島々が点在する。真珠は穏やかな湾で養殖されている。核入れの済んだアコヤ貝は真珠筏の下に吊るされ、大切に育てられる。真珠が採り出されるのは、7カ月から2年半後になる。その間、貝の掃除など細やかな管理がされ、美しい真珠になるため、筏の下でひたすら時を過ごす。 真珠筏に降り注ぐ夏の雨は、アコヤ貝を労わるように静かで明るい雨である。 (半谷 洋子)
島陰の真珠筏に夏の雨

増成栗人

 社団法人俳人協会 俳句文学館590号より