俳句カレンダー鑑賞  平成21年11月

俳句カレンダー鑑賞 11月
文化の日万年筆は名を変へず 鈴木榮子

 第4句集『繭玉』所収。
 作者はペリカンとモンブランと国産のパイロットの万年筆を愛用している。常に確りした読み易い字で書く原稿は、評判が良い。
 その万年筆だが、何故そういう名で呼ぶようになったのか、本当の所は解らない。明治になって輸入された頃は「万年ふで」と言っていたが、じきに「万年ひつ」と言うようになった。
 古来「万年」とは長持ちする、丈夫なもの、亀は万年など長寿を愛でる意味に使われてきたのである。
 戦後ボールペンや筆ペンが出回り、さらにパソコンの時代になり、万年筆という名でいいのかと一部の声があったが、万年筆そのものは勿論、その名前にも憧れがあったので何の違和感もなく愛着が持たれてきた。こういうことが文化なのであろう。この句「万年筆は」が主語になって比喩的に詠んでいるのである。
 私たちの大先輩、西山誠氏の句に〈ペンはオノトインキはアテナ文化の日〉がある。「榮子さん、いい句ですよ、その通りです」と微笑んでおられる事であろう。(長浜徳三)
文化の日万年筆は名を変へず

鈴木榮子

 社団法人俳人協会 俳句文学館463号より