俳句カレンダー鑑賞 平成21年10月
- 俳句カレンダー鑑賞 10月
-
「長く俳句に生かされた者として、今日の俳句の多種多様さから目を離さず、過去、現在、未来にかかわる十七音をたのしみたいと思っている」。(句集『湖心』のあとがきより)。
4代目主宰を継がれてより激務の日々をおくられているが、結社に関わりある地はいうまでもなく、折々遠路の旅もいとわず研鑽を積まれている。
掲句は旅吟の一句と思われるが、常識的な橋に対する観念を避けて、かつての旅の感動を心象風景とし、「名のある橋をわたりけり」と省略の効いた表現に至ったと想像される。
焦点の絞られた表現が、季語の存在感を確かに印象づけているといえる。
さらに作品に関わる想像力・余情は、すべて読者にゆだねられていることも受け止められる。
「名のある橋」に静かに歩を運びながら、周辺の初紅葉を賞でる。至福の時を得て、この一作品が成されたと思われる。
同季語の作品。〈谷水と一夜を過ぎて初紅葉〉(吉野)があげられる。(水野すみ子)初紅葉名のある橋をわたりけり
原和子
社団法人俳人協会 俳句文学館462号より