俳句カレンダー鑑賞  平成23年10月

俳句カレンダー鑑賞 10月
秋風やはがねとなりし蜘蛛の糸 大峯あきら

秋風やはがねとなりし蜘蛛の糸 大峯あきら
 蜘蛛の糸といえば細くて頼りないものを思う。だが季節はすでに秋。その糸は「はがね」となったというのである。
 この句を一読したときに思い浮かべるのは、しろがねの強靭な糸で織りなされた蜘蛛の囲だ。しなやかに風に波打ち、決して破れることはない。細い糸は秋風に鍛えられて、強さとともに輝きを増したかのようだ。クローズアップされているのは蜘蛛ではなく、あくまでもその糸である。  「はがね」という、蜘蛛の糸とは最も遠いはずのものが、この句において新たなイメージを生み出していることに注目した。それは「秋風」を背景にしていることにもよるだろう。
 秋風のもつ古典的な趣とともに、秋という季節自体がもつ、亡びに向かう光を感じさせる作品である。現実を超えた美をそこに見る。
(片山由美子)
 社団法人俳人協会 俳句文学館486号より