俳句カレンダー鑑賞 令和5年11月
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令和3年に上梓された第4句集『草蜉蝣』所収。
第3句集『遍歴』のち7年間の作品から318句が収められ、掲句は平成29年の作。句集のあとがきに「私も米寿。しかしまだ自分の俳句は見えてこない。老いたれど老いたなりの静かな青春性を追求してゆきたいと考えている」と述べられている。
句集は吟行句を主に構成されており、老いを感じさせる句はない。
「鴻」を率いて17年。コロナ後も句会指導、吟行と各地へ足を運ばれている。余分な言葉をそぎ落とし、季語を信じてリズムを整える。一期一会を句に昇華させるには、日々の鍛錬の他は無い。
掲句に詠まれているのは、一木に一草に差す日差しのみ。作者の追い求める老いの青春性が浄化され、習熟の極みに達した平明な句であり、俳句の奥深さを伝えている。
(横井 遥)一木に一草に日の差して冬
増成栗人
社団法人俳人協会 俳句文学館630号より