俳句カレンダー鑑賞 令和5年10月
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掲句は繪硝子俳句会の東海支部が計画した「飛騨古川吟行」の折の句とお聞きする。よく晴れて山国は紅葉の真っ盛り。
主宰の目は地の湿りを帯び燦然と輝く紅葉に止まった。しかし、手に取った途端紅葉はたちまち色褪せてしまう。誰もが感じながらこのように詠まれたことがなかった。
ひとつの命の最後の煌めき。大地が育んだ命は大地に抱かれている時が最も美しい。「手に拾ふまで」は軽やかに本質を掴んだ措辞。それが究極の表現となり説得力を持つ。
私たちが泊まった旅館は「八ツ三館」。ここは信州へ糸取りに行く娘たちが家族と最後の別れをした宿である。『あゝ野麦峠』に重ねれば、また違う紅葉が見えてくる。
掲句は平成24年11月の朝日新聞「天声人語」に引用された記念の一句でもある。
(千葉 喬子)手に拾ふまでの紅葉の美しき
和田順子
社団法人俳人協会 俳句文学館629号より