俳句カレンダー鑑賞  平成27年1月

俳句カレンダー鑑賞 1月
初富士を正面今が真正面 鷹羽狩行
初富士を正面今が真正面

鷹羽狩行
「初富士を正面に見ていたつもりだったが、あっ!今こそ真正面に見える初富士だ」という鑑賞ができるのは、旧作〈初富士や新幹線を真一文字〉から連想される新幹線車上などの移動体から見た初富士の捉え方である。
「を」を動作の及ぶ助詞として鑑賞した。
 しかし「を」を感動・詠嘆の助詞として鑑賞し直すとどうなるだろうか。
 「初富士を」で切って一呼吸おいてみると、ここに顕ち現れる初富士は甲斐盆地から山越しに見る富士でも、遠望の富士でも、全容を見上げるほどの富士でもいずれでも良く、眼前の富士を初富士と思う瞬間に見る者の真正面に位置するのだという鑑賞になる。
 富士山に裏も表もなく正面も側面もない。初富士は見る場所に左右されず、富士山を初富士として敬虔に見る全ての人に真正面に見える一期一会の初富士なのである。
 句集『十六夜』所収。
(蟇目 良雨)
 社団法人俳人協会 俳句文学館525号より