俳句カレンダー鑑賞  令和6年5月

俳句カレンダー鑑賞 5月
生きてゐる限り青春白牡丹 松尾隆信

 自註に拠ると、「生きているかぎりは現役の気持ちで生きる。ゲーテのように生き抜きたいの思いが日々強くなる」とある。ゲーテは自由な精神と「調和」を是とし、グローバルに活躍する作家兼政治家兼自然科学者であった。生涯書き継いだ『ファウスト』の第二部を完成させた翌日3月22日(1832年)に82歳で亡くなった。
 ドイツに現存するゲーテの家を訪ね、その最後をまじかに感じ取った作者ならではの終生現役への思いであろう。それはゲーテを受容した師上田五千石の句業とも重なる。
 牡丹は女性の象徴でもある。中でも白牡丹は気品が高い。白牡丹との取合せに気高い生き方と恋愛への憧憬が感じられる。理想を失ったとき人は老いるという。
(岸  桃魚)
生きてゐる限り青春白牡丹

松尾隆信

 社団法人俳人協会 俳句文学館636号より