俳句カレンダー鑑賞  平成27年10月

俳句カレンダー鑑賞 10月
山風の置いてゆきたる小鳥かな 黛 執

 秋になると小鳥たちが目立つ。ジョウビタキやツグミのように北から渡って来るものもいれば、シジュウカラのように山地の林にいたものが秋になって平地に下りて来るものもいる。また、スズメなどの留鳥も田んぼから人里へ戻って来る。
 秋も深まった頃、庭に見慣れない小鳥がひょっこりと来ていることがある。あれ、もうそんな季節か。そう云えば山からの風も吹いたなぁと晩秋になった感慨に耽ける。
 掲句は擬人法を使って、山風がそっと置いていった小鳥たちだよと詠んでいる。すると急にメルヘンチックになって、山風も清々しいものに思われ、小鳥たちも挨拶でもしているようで親しいものになってくる。
 「小鳥かな」の詠嘆に作者の自然に対するやさしい眼差しも感じることができる。(木野 泰男)
山風の置いてゆきたる小鳥かな

黛 執

 社団法人俳人協会 俳句文学館534号より