今月の俳句

俳句カレンダー鑑賞 2月
浅春や忘れがたなに雲流る 横澤放川

中村草田男の「萬緑」は、平成29年3月で終刊となった。その精神を継承し、横澤放川氏を代表とする「森の座」が翌4月に新たな船出をした。
 創刊号の「出発のことば」の中に「俳句というこの極度に短い詩形のことばは、だからこそ終には祈るということそのことであるに違いありません」との一文がある。
 浅春というどこか心許ない時節に、満たされないような心地で空を仰ぐと、雲が静かに流れていた。「忘れがたな」は「がたなし」(難なし)の語幹の「がたな」に「に」という助詞を添えて副詞的に用いたものである。
 ゆっくりと流れる雲は、近づく春の気息を感じさせる、一期一会の忘れることができない景であったのだろう。
 この瞬間にも、作者の祈りが確かに感じられる。(嘴  朋子)
浅春や忘れがたなに雲流る

横澤放川

 社団法人俳人協会 俳句文学館574号より