今日の一句:2025年09月

九月一日
稲妻いなずまごとけわくずみだれ千代田葛彦

傍若無人、旺盛な繁殖力を見せた葛も、ようやく衰えと乱れを見せはじめる。夜毎の稲妻がそれを促しているのだ。

「千代田葛彦集」
自註現代俳句シリーズ二(二五)

九月二日
うつくしく男郎花おとこえしをみなへし小林輝子

木を伐ると翌年はその斜面に男郎花が沢山咲き出す。だが女郎花の咲く野原がめっきり少なくなってしまった。しきりと老いを考える。

「小林輝子集」
自註現代俳句シリーズ九(二二)

九月三日
はばからずくら水蜜桃甘すいみつとうあま樋笠 文

水も滴るような水蜜桃は、丸ごと食べるに限る。ナイフを用い、恐る恐る剝いて食べるのは、性に合わない。

「樋笠 文集」
自註現代俳句シリーズ四(四〇)