今月の俳句
- 俳句カレンダー鑑賞 11月
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掲句の「みづうみ」は北アルプス薬師岳の麓、自然林に囲まれたダム湖であり、「有峰湖」として親しまれている。有峰湖周辺は山毛欅、水楢、楓など落葉樹が多い。
県の有峰森林文化村主催で「有峰俳句に親しむ会」が催され、20年余り続くこの会で作者は毎回講師を勤められる。幾度も訪れ、慣れ親しんだ有峰。遊歩道を行けば木々の間から、また眼下にと目に入ってくる有峰湖は、ことの他慕わしく安らぎを与えてくれる。
掲句は、初冬の吟行会での句。
青空に薬師岳、山毛欅や水楢の落葉が散り敷く遊歩道。野鳥の声にふと後ろを見れば、肩口に満々とした青い湖面が見える。足元からは落葉が香り立つ。五感を通して感じる森の気配。
山懐に抱かれ、作者は自然と一体化している。
(菅野 桂子)みづうみを背負うて歩く落葉の香
中坪達哉
社団法人俳人協会 俳句文学館654号より
