第51回全国俳句大会 一般の部

開催日:平成24911日 於:有楽町朝日ホール

【大会賞】

なまはげの去りたる藁を拾ひけり  大阪府 小畑 晴子

大鯉のすなほに抱かれ池普請    広島県 坂本たか子

果てもなくこの世の雪を卸しけり  宮城県 長谷部俊夫

一歳の違ひで征かず蝉しぐれ    埼玉県 田中 道敏

鵜篝の残り火に舟洗ひをり    神奈川県 小沢 麻結

 

【秀逸賞】

母の抱く遺影卒業証書受く     福島県 西牧トキ子

葛晒す桶に迫りし山の影      愛知県 古賀勇理央

縄文の血が吾にあり栗拾ふ     青森県 須藤  武

大岩に刻みし校歌山桜       千葉県 石崎 宏子

蓮根掘畔に膝つき上がりけり    東京都 若林杜紀子

山に日が沈めば郡上をどりかな   東京都 水野 李村

田植機を休めず親子入れ替る    新潟県 竹股かず子

幽霊も小道具運ぶ夏芝居      京都府 高橋 真砂

 

※各選者特選三句について、一部句数が揃っていないのは、選出後に類句あるいは二重投句と判明し、取り消しとなった作品があるためです。

 

有馬朗人特選

山彦のよく返る日や山桜       埼玉 小野崎清美

なまはげの去りたる藁を拾ひけり   大阪 小畑 晴子

鮭を打つ棒を洗ひて老いにけり    東京 綱島  清

 

茨木和生特選

大岩に刻みし校歌山桜        千葉 石崎 宏子

牛飼ひは何時も長靴麦の秋     神奈川 岡田 貞二

 

今瀬剛一特選

雪だるま人寄り来ては去りゆけり   東京 小栗しづゑ

草餅の色にけぶれる母郷かな    神奈川 由田 欣一

黴拭ふ青春の書にある重み      山口 田中 青風

 

大串 章特選

白鳥に逢ひたる夜の深眠り     北海道 今井 星女

大岩に刻みし校歌山桜        千葉 石崎 宏子

風船は空へ巨船はわだつみへ     兵庫 大星たかし

 

岡田日郎特選

旅の夜の更けて遠田の蛙かな     埼玉 小山 徳夫

山影のかむさりゐたり干大根     静岡 飯野 定子

渦潮に雪の降り込む速さかな     山口 木嶋 政治

 

小川濤美子特選

花冷や人逝かしめし海平ら      福島 土田 啓三

ひとすぢの涙もことば卒業子     東京 田村登代子

生きることまだまだ楽し桜草     兵庫 前田 星子

 

小澤 實特選

金屑の油光りや春隣         埼玉 丑久保 勲

田植機を休めず親子入れ替る     新潟 竹股かず子

 

小原啄葉特選

風邪の子のたちまち風の子となりぬ  東京 坂東 文子

逐はれたる山河を歌ひ卒業す    神奈川 堀越 龍人

 

鍵和田秞子特選

縄文の血が吾にあり栗拾ふ      青森 須藤  武

橋落ちて雄島ただよふ銀河かな    宮城 藤野 尚之

舗道凍つ聖者の如き物乞に      群馬 三木 妙子

 

柏原眠雨特選

燕来る津波の抜けし廃校舎      宮城 畑中 次郎

大根干す即身仏の山の寺      神奈川 權守 勝一

鯉のぼり石で押さへて畳みゆく    岡山 前田 留菜

 

片山由美子特選

初蝶の黄に逢ひ白に逢ひにけり    埼玉 鈴木美喜子

母の日の鏡台に花さしてあり     福岡 安藤 順一

 

神尾久美子特選

  上記※をご参照ください。

 

神蔵 器選

母の抱く遺影卒業証書受く      福島 西牧トキ子

稲青き鉢を抱へて登校す       三重 宮谷ふさ子

 

倉田紘文特選

花びらを真中に水輪生まれけり    千葉 石崎 宏子

みづうみを手鏡として山粧ふ     東京 安西 可絵

枇杷の花母に無駄口なかりけり    奈良 木下 栄子

 

栗田やすし特選

鉛筆の手より微睡む春炬燵      石川 中川 雅雪

轆轤蹴る足の下より隙間風     神奈川 權守 勝一

幽霊も小道具運ぶ夏芝居       京都 高橋 真砂

 

黒田杏子特選

果てもなくこの世の雪を卸しけり   宮城 長谷部俊夫

五人家族春に津波の来るまでは    秋田 和田  仁

 

古賀まり子特選

母の抱く遺影卒業証書受く      福島 西牧トキ子

黙祷のまなうらに散るさくらかな   埼玉 岡野美代子

九十九里つぎの一里に卯浪たつ   神奈川 小倉 立史

 

後藤比奈夫特選

手放せば少女花野の蝶となる     茨城 町井すみれ

芹摘むはマザーテレサかも知れず   千葉 横山 冬都

恋成就して雪をんな雪になる     大分 阿部 正調

 

斎藤夏風特選

野あそびのはづれにありし忘れ水   埼玉 高松 文月

鵜篝の残り火に舟洗ひをり     神奈川 小沢 麻結

田植機を休めず親子入れ替る     新潟 竹股かず子

 

佐川広治特選

果てもなくこの世の雪を卸しけり   宮城 長谷部俊夫

流木に腰を下ろして春の海      愛知 恵利 菊江

 

島谷征良特選

果てもなくこの世の雪を卸しけり   宮城 長谷部俊夫

火渡りの足へひと杓寒の水      岡山 赤木ふみを

 

鈴木貞雄特選

拭き清め弟子なき轆轤飾りの輪    埼玉 渡邊 氣帝

求愛の羽毛天より鳥の恋       三重 金津やよい

おかあさあんと母が呼びをり明易し  山口  長谷川久美子

 

鈴木鷹夫特選

昏睡の子の枕辺に雛飾る      神奈川 中沢 三省

見舞ふたび母遠くなる蓬餅      岡山 三宅 忠昭

 

鷹羽狩行特選

花種を蒔き花園にゐる思ひ      千葉 鶴田ちしほ

ためらへば夫が買ひけり懸想文    奈良  長谷川紀美子

大鯉のすなほに抱かれ池普請     広島 坂本たか子

 

棚山波朗特選

置き場なき瓦礫の山に雪降れり    東京 綱島  清

 

辻田克巳特選

一歳の違ひで征かずしぐれ     埼玉 田中 道敏

紙ふうせん幼の息のかたちかな    鳥取 岩水 節子

菱餅の菱のゆがまぬやうに切る    岡山 花岡 鈴子

 

七田谷まりうす特選

ざぶざぶと春愁の顔洗ひけり     徳島 戸井 一洲

人工関節わが膝となり青き踏む    東京 矢島三榮代

葛晒す桶に迫りし山の影       愛知 古賀勇理央

 

西嶋あさ子特選

なまはげの去りたる藁を拾ひけり   大阪 小畑 晴子

 

西村和子特選

山に日が沈めば郡上をどりかな    東京 水野 李村

楊貴妃のその後は次回夏期講座    東京 水野 李村

寒雁の光を返す薄暮かな       宮城 安達 朝子

 

根岸善雄特選

石鹸玉吹いて青空廻しけり      千葉 原  瞳子

紙ひひな母の遺影の前に置く     大阪 田中 利勝

 

野見山ひふみ特選

みちのくの空に傷なし初桜      宮城 上田 啓子

堅香子や流人残せし能舞台      福岡 久松 明忠

 

星野恒彦特選

声ほどに群れては居らず寒雀     静岡 飯野 定子

 

星野麥丘人特選

百歳の母に花種蒔きにけり      三重 中山 暁代

 

正木ゆう子特選

大声でルールを決めて雪合戦     埼玉 川辺  了

雪となるかちりとボールペン出して  千葉 福井 隆子

バックミラー辛夷はいつも遠くの木  東京 久保山満末

 

松崎鉄之介特選

大鯉のすなほに抱かれ池普請     広島 坂本たか子

蜃気楼消えしあとなる海の青    神奈川 高見 紀子

 

水原春郎特選

悴める指折つて子の五七五      東京 矢島三榮代

老刀自は正座くづさず花むしろ    三重 平田 冬か

 

森田 峠特選

産見舞金粉入りの鮓さげて      愛知 栗田せつ子

銃眼を覗けば山の笑ひけり      海外 鈴木 波江

 

山崎ひさを特選

一人碁を並べて父の日なりけり    埼玉 杉森与志生

一歳の違ひで征かずしぐれ     埼玉 田中 道敏

 

山本洋子特選

父の癖ある田植機を転しぬ     神奈川 岡田 貞二

子らもこゑひそめ螢の国に入る    広島 加計 姷

 

蓬田紀枝子特選

蹄鉄を打たれけふより春の駒     東京 馬郡 民子

風呂敷をゆるく結びて桜餅      富山 嶋田智惠子

 

【当日句会】

黛 執特選

ねぷた去り闇にやぶれ目残りけり   中村芙路子

添ひにけり秋刀魚きれいに食ふ人と  結城あき

呼べば振り向いてくれさう遠案山子  西川肇子

 

栗田やすし特選

ひらひらと月夜の蟹の釣られけり   岡田貞二

銀座の子朝顔の種採つてをり     松野篤子

秋晴や子規拝領の仕込み杖      北條五十彦

 

鈴木貞雄特選

仏工に先づ労ひの新走り       矢島三榮代

帰国子の音たて囓る新生姜      鈴木みすず

 

山本洋子特選

帰国子の音たて囓る新生姜      鈴木みすず

傷ひとつなき空眩しひろしま忌    三井あきを

鎮魂の海へ流星途切れなき      橋本ゆきお

 

大石悦子特選

洗ふたび藍の目覚めて水澄めり    金津やよひ

曰はく徳は孤ならず葡萄の実     片桐啓之

山の子はゆつくり育ち浮いてこい   上田公子

 

石田郷子特選

星の空から美しき秋の声       鶴田ちしほ

添ひにけり秋刀魚きれいに食ふ人と  結城あき