第60回全国俳句大会 ジュニアの部

【大会賞】(学年順)

 

とびこむとプールへこんでうけとめる

 秋田県 八峰町立峰浜小学校 小3 小林 優

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 暑い日のプールの授業は、楽しく待ち遠しいものなのでしょう。水に親しんでプールと友だちになっている明るさがこの句にはあります。プールが自分たちをうけとめてくれた、というのは、プールも友だちが来るのを心待ちにしていたかのようです。(選評=鎌田 俊)

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「おはよう」と言った気がする葱坊主

 山梨県 学校法人駿台甲府学園駿台甲府小学校 小4 古屋璃佳

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 集団登校の朝の景。「葱坊主」が「おはよう」と声をかけてきたと言う。その言葉は、作者以外の子供たちには届いていない。はちきれんばかりに膨らんだ葱坊主の姿かたちと、4年生に進級したうれしさと自覚がいい具合に一句に集約されてる。(選評=菊田一平)

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青空を使い放題運動会

 広島県 福山市立城北中学校 中1 河村文音

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 なんと気持ちの良い作品でしょう。真っ青な空に万国旗がはためき、真っ直ぐに引かれたラインの白、鼓笛隊の誇らしい演奏が響き渡ります。選手宣誓の声も高らかに全校生の歓喜の声がグラウンドに広がります。使い放題に活き活きとした感動がつたわりました。(選評=すずき巴里)

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「先輩」と後輩の声桜咲く

 東京都 学習院女子中等科 中2 眞野琴子

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 二年生に進級したばかりの作者。思いがけず「先輩」と声を掛けられました。初めて後輩ができたことに気付かされたのです。嬉しいような、ちょっぴり恥ずかしくもあり背中がぴんとなりました。桜咲く、に初々しい誇らしさが籠められて頼もしい先輩の誕生です。(選評=すずき巴里)

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雪うさぎ目耳のこしてにげにけり

 福岡県 筑紫女学園中学校 中3 金子ひかる

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 小さな雪玉に南天の実と葉をあしらった雪うさぎ。日中の日差しに溶けてしまう雪うさぎをあわれに思う心情はさまざまな作品となっているが、逃げた= 解放されたとする幸福感が新鮮。小さな水たまりに浮かぶ赤い実と緑の葉が自由になったうさぎの置き手紙のようにも思われる。(選評=土肥あき子)

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鷹が描く円はコンパスより正しい

 奈良県 五條市立五條東中学校 中3 仲野拓未

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 大空を旋回する鷹のありようを〝精確に〞描き切った作品です。「コンパスより正しい」という言いきりが魅力です。誇張が含まれていますが、読者を納得させる詩的な断定です。超然と飛翔する鷹だからこそ歪みのない円が描ける! 鷹への畏敬の念が伝わります。(選評=望月 周)

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弟が「俺」使いだす春日和

 東京都 学習院女子高等科 高2 鈴木美裕

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 新学期がはじまり、新しいクラスメイトに影響をうけたのでしょうか。弟のなれない言葉づかいに、すばやく気がついたのでしょう。言葉や単語の変化にはっとさせられながらも、成長していく弟を見守るまなざしが、「春日和」という季語から伝わってきます。(選評=鎌田 俊)

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はんだごて汗でぬれたる実習着

 鹿児島県 鹿児島県立鹿児島工業高等学校 高3 栫山魁雄

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 授業の一齣が描かれて、実習する作者の真剣なまなざしや、熱気まで伝わってくる。「はんだごて」「汗」「ぬれたる実習着」と、具体的な物のみを提示して状況や心情を表している。畳みかけるようなリズムも良く、実に清々しく見事である。(選評=浅井民子)

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【優秀賞】

春のあさまどをあけたら二年生

 東京都 江東区立越中島小学校 小2 菅沼ゆいか

 

ストーブのたき木をとりに行くやくめ

 秋田県 八峰町立峰浜小学校 小3 ささ木ぜん

 

春の雨わたしのかさも咲きに行く

 静岡県 静岡市立番町小学校 小3 紅林詩織

 

ねこの鼻春のにおいを感じてる

 山梨県 学校法人駿台甲府学園駿台甲府小学校 小4 岡田桃季

 

春風と一年生が学校に

 東京都 江東区立第一亀戸小学校 小4 久保圭新

 

デカくなれ夏に生まれる弟よ

 岡山県 美作市立美作小学校 小4 山本萩平

 

まどのかぎまで手がとどくこどもの日

 岐阜県 大垣市立墨俣小学校 小5 大野成美

 

教室のにおいが残るランドセル

 東京都 葛飾区立新宿小学校 小6 髙山功次郎

 

名前までつけた楽器と卒業す

 東京都 葛飾区立新宿小学校 小6 吉田名津美

 

上ばきに穴二つあけ卒業す

 東京都 葛飾区立新宿小学校 小6 野村凰日

 

消しゴムがしゃきっとしてる四月かな

 東京都 江東区立第四砂町小学校 小6 須藤 丞

 

蟬の声青いキャンバス何書こう

 東京都 江東区立深川第六中学校 中1 谷島愛海

 

一つだけ我が道を行く石鹸玉

 東京都 学習院女子中等科 中1 加藤優陽

 

車窓から見えし実家の瓜畑

 東京都 学習院女子中等科 中1 八木みのり

 

鞦韆をこぐ下北の空をこぐ

 青森県 むつ市立大湊中学校 中3 外﨑 新

 

夏の空すんすんかおる塩素しゅう

 宮城県 大崎市立古川西中学校 中3 門眞颯杜

 

恋の歌ばかりを探すかるた取り

 宮城県 仙台市立郡山中学校 中3 畠山紗世

 

冬の風かばんの中に最低点

 福岡県 筑紫女学園中学校 中3 松嶋夏凛

 

目を合わせ息を合わせて汗光る

 広島県 福山市立城北中学校 中3 森分 優

 

マフラーに顔をうずめて待つ返事

 佐賀県 佐賀市立川副中学校 中3 馬場﨑令桜

 

夏の海深く潜れば父の声

 福岡県 糸島市立前原中学校 中3 山下咲良

 

初恋がガシャンと割れるソーダ水

 神奈川県 慶應義塾普通部 中3 瀧本孝太郎

 

別の道ゆく友の背に春の雨

 東京都 学習院女子高等科 高1 田中茉莉

 

木の芽張る聖歌を歌う喉仏

 愛知県 名古屋高等学校 高1 山田真滉

 

制服のネクタイ正し啄木忌

 宮城県 クラーク記念国際高等学校 仙台キャンパス 高1 横溝惺哉

 

夏空に打ち上げられた決勝点

 鹿児島県 鹿児島県立鹿児島工業高等学校 高2 中村元紀

 

囀や二次関数の五時間目

 愛知県 愛知県立豊橋西高等学校 高2 佐藤秋雅

 

春の空デッドボールの初打席

 長崎県 長崎県立佐世保東翔高等学校 高2 岩永結芽

 

岩塩の劈開のつや梅若葉

 奈良県 奈良女子大学附属中等教育学校 高2 荻野瑛穂

 

木の芽萌ゆサークルの鍵隠す場所

 愛媛県 愛媛県立松山東高等学校 高3 山根大知

 

夏隣る髪結う位置の高さ変え

 東京都 学習院女子高等科 高3 遠藤陽香

 

マンションとマンションの間の盆踊り

 愛知県 名古屋高等学校 高3 浄土竜之介

 

母の日じゃ足りないくらいありがとう

 東京都 東京都立江戸川高等学校 高3 佐藤百華

 

にのうでを初めて見たり南風

 東京都 東京都立江戸川高等学校 高3 小幡谷こはる

 

さえずりや彩とりどりのランドセル

 茨城県 茨城県立結城第二高等学校 高3 加藤結衣花

 

 【学校賞】

◆小学校◆

東京都 江東区立第六砂町小学校

富山県 高岡市立伏木小学校

秋田県 八峰町立峰浜小学校

山梨県 学校法人駿台甲府学園駿台甲府小学校

 

◆中学校◆

東京都 学習院女子中等科

広島県 福山市立城北中学校

福岡県 筑紫女学園中学校

奈良県 五條市立五條東中学校

 

◆高等学校◆

東京都 学習院女子高等科

鹿児島県 鹿児島県立鹿児島工業高等学校

 

【奨励賞】

◆小学校◆

東京都 江東区立第一亀戸小学校

東京都 江東区立越中島小学校

鹿児島県 伊佐市立湯之尾小学校

 

◆中学校◆

東京都 江東区立深川第六中学校

神奈川県 日本女子大学附属中学校

神奈川県 慶應義塾普通部

 

◆高等学校◆

愛知県 愛知県立安城高等学校

愛媛県 愛媛県立松山東高等学校

岡山県 学校法人山陽学園山陽学園高等学校

 

【選者特選・入選】※表示できない文字を一部代替しています。ご了承ください。

 浅井民子 選

◎特選

デカくなれ夏に生まれる弟よ

 岡山県 美作市立美作小学校 小4 山本萩平

蟬の声青いキャンバス何書こう

 東京都 江東区立深川第六中学校 中1 谷島愛海

目を合わせ息を合わせて汗光る

 広島県 福山市立城北中学校 中3 森分 優

別の道ゆく友の背に春の雨

 東京都 学習院女子高等科 高1 田中茉莉

はんだごて汗でぬれたる実習着

 鹿児島県 鹿児島県立鹿児島工業高等学校 高3 栫山魁雄

 

◎入選

ひとりでおふろまどのすず虫きいている

 富山県 高岡市立伏木小学校 小2 渡辺崇右

雨あがりにじのかいだんのぼりたい

 岐阜県 大垣市立西小学校 小2 中村みこと

とびこむとプールへこんでうけとめる

 秋田県 八峰町立峰浜小学校 小3 小林 優

ひまわりや黄色の絵の具やせちゃった

 徳島県 徳島文理小学校 小4 中村拓夢

巨人のようドシンドシンと春来たよ

 東京都 葛飾区立こすげ小学校 小5 吉田好之介

空泳ぐ何人兄弟こいのぼり

 東京都 江戸川区立南篠崎小学校 小5 保坂玲果

ソフトクリーム時間がとけてゆくみたい

 京都府 京都府立美豆小学校 小5 岡 瑚々海

振り向いたとたんに夏は色褪せる

 大阪府 大阪星光学院中学校 中2 中村清太郎

シャボン玉きっと中身は夢だらけ

 神奈川県 日本女子大学附属中学校 中2 阿部珠美怜

山積みの課題猫の子知らん顔

 神奈川県 日本女子大学附属中学校 中2 殿川ゆり

雪うさぎ目耳のこしてにげにけり

 福岡県 筑紫女学園中学校 中3 金子ひかる

生命線ペンでつけたす万愚節

 東京都 八王子市立由井中学校 中3 佐藤嶺奈

マフラーに顔をうずめて待つ返事

 佐賀県 佐賀市立川副中学校 中3 馬場﨑令桜

初恋がガシャンと割れるソーダ水

 神奈川県 慶應義塾普通部 中3 瀧本孝太郎

にじませる言えない五文字母の日に

 東京都 学習院女子高等科 高1 青木友香

円陣で高まる鼓動夏試合

 愛知県 愛知県立安城高等学校 高2 浅尾 響

永き日や内ポケットには僕の空

 愛媛県 愛媛県立松山東高等学校 高2 岡本朔弥

袖口に隠れぬ手首卒業式

 東京都 学習院女子高等科 高3 大嶌遥菜

旅立つ日祖父と植えたる桜の木

 鹿児島県 鹿児島県立鹿児島工業高等学校 高3 俊岡仙斗

用水路ラムネを冷やす籐のかご

 東京都 東京都立江戸川高等学校 高3 千葉眞之介

 

鎌田 俊 選

◎特選

とびこむとプールへこんでうけとめる

 秋田県 八峰町立峰浜小学校 小3 小林 優

車窓から見えし実家の瓜畑

 東京都 学習院女子中等科 中1 八木みのり

雪うさぎ目耳のこしてにげにけり

 福岡県 筑紫女学園中学校 中3 金子ひかる

木の芽張る聖歌を歌う喉仏

 愛知県 名古屋高等学校 高1 山田真滉

岩塩の劈開のつや梅若葉

 奈良県 奈良女子大学附属中等教育学校 高2 荻野瑛穂

 

◎入選

ぴかぴかのじめんをあるくはるのあさ

 埼玉県 加須市立高柳小学校 小1 吉田瑛翔

きたかぜがかおにあたってにげていく

 埼玉県 加須市立高柳小学校 小1 大平琉星

すべりだいからほいくえんみえたはるのかぜ

 鹿児島県 伊佐市立湯之尾小学校 小1 湯地駿太

こがらしが足にからまる朝の道

 東京都 江東区立第六砂町小学校 小3 小林晄大

ワラビ取りたからの山に住むじいじ

 静岡県 静岡市立番町小学校 小3 小野茜音

ランドセルかたひものばす春の朝

 埼玉県 深谷市立岡部西小学校 小5 村田碧士

春の午後バニラの香りついてくる

 岐阜県 大垣市立墨俣小学校 小5 大橋由名

梅雨の夜かばんをかさにサラリーマン

 東京都 葛飾区立幸田小学校 小6 田中優衣

母さんが一気にはがず布団かな

 東京都 江東区立第六砂町小学校 小6 富岡幸太郎

一つだけ我が道を行く石鹸玉

 東京都 学習院女子中等科 中1 加藤優陽

絵日記に小さなひだまりなつみかん

 神奈川県 日本女子大学附属中学校 中2 山崎結奈

マフラーに顔をうずめて待つ返事

 佐賀県 佐賀市立川副中学校 中3 馬場﨑令桜

桜東風長さ揃えし髪ゆらす

 福岡県 筑紫女学園中学校 中3 浦野丹瑚

鷹が描く円はコンパスより正しい

 奈良県 五條市立五條東中学校 中3 仲野拓未

麻酔なし頭にホチキス春の雨

 神奈川県 サレジオ学院中学校 中3 清岡慧士

シャッター音舞った桜の時止める

 東京都 江東区立深川第六中学校 中3 鈴木理子

弟が「俺」使いだす春日和

 東京都 学習院女子高等科 高2 鈴木美裕

囀や二次関数の五時間目

 愛知県 愛知県立豊橋西高等学校 高2 佐藤秋雅

亀鳴くや机の中をさぐる腕

 東京都 学習院女子高等科 高3 佐藤綺良

春雨や電子レンジで回るご飯

 東京都 学習院女子高等科 高3 木村美里

 

菊田一平 選

◎特選

ねこの鼻春のにおいを感じてる

 山梨県 学校法人駿台甲府学園駿台甲府小学校 小4 岡田桃季

鞦韆をこぐ下北の空をこぐ

 青森県 むつ市立大湊中学校 中3 外吉 新

恋の歌ばかりを探すかるた取り

 宮城県 仙台市立郡山中学校 中3 畠山紗世

夏隣る髪結う位置の高さ変え

 東京都 学習院女子高等科 高3 遠藤陽香

母の日じゃ足りないくらいありがとう

 東京都 東京都立江戸川高等学校 高3 佐藤百華

 

◎入選

にゅうがくしきちょっとおもたいランドセル

 神奈川県 横浜市立元石川小学校 小1 荒川麻梨子

ストーブのたき木をとりに行くやくめ

 秋田県 八峰町立峰浜小学校 小3 ささ木ぜん

洋服にこっそりつけるせみのから

 埼玉県 加須市立高柳小学校 小3 竹村璃々

ねこちゃんがじーっと見てるかしわもち

 東京都 江東区立越中島小学校 小3 青山瑛美

あきといえばわたしはやっぱりくりだな

 東京都 葛飾区立幸田小学校 小3 黒田らむ

赤いふく金魚とわたしおそろいだ

 東京都 江東区立枝川小学校 小3 西野沙奈子

むらさきのピアスのようななすの花

 東京都 日本女子大学附属豊明小学校 小3 志賀梓南

「おはよう」と言った気がする葱坊主

 山梨県 学校法人駿台甲府学園駿台甲府小学校 小4 古屋璃佳

コイのぼりおいしい風をすっている

 富山県 氷見市立朝日丘小学校 小5 瀬戸早矢加

石鹸玉心の中も虹色に

 東京都 江東区立越中島小学校 小5 小西麻央

こいのぼりお空の川を泳いでる

 岐阜県 大垣市立西小学校 小5 坪内美月

消しゴムが小さくなった春休み

 和歌山県 新宮市立高田小学校 小6 西村あおい

たけのこを食べたら気分はかぐや姫

 埼玉県 寄居町立男衾小学校 小6 小泉里菜

やごがいるプールそうじの水のあと

 兵庫県 伊丹市立池尻小学校 小6 しもとりゆうせい

春日傘かがみの前でさしてみる

 東京都 学習院女子中等科 中1 林 楓

赤くなるカーネーションと母のほほ

 神奈川県 日本女子大学附属中学校 中2 桜井瑚子

カーネーション背中に隠し母の元

 茨城県 茨城県立下館第一高等学校附属中学校 中2 今井花菜

鯉幟父がはりきり泳がせる

 岡山県 学校法人山陽学園山陽学園高等学校 高2 萩原 藍

大寒やリモートで会うおばあちゃん

 大分県 独立行政法人国立高等専門学校機構 大分工業高等専門学校 高2 小名川舜汰

はんだごて汗でぬれたる実習着

 鹿児島県 鹿児島県立鹿児島工業高等学校 高3 栫山魁雄

 

すずき巴里 選

◎特選

名前までつけた楽器と卒業す

 東京都 葛飾区立新宿小学校 小6 吉田名津美

教室のにおいが残るランドセル

 東京都 葛飾区立新宿小学校 小6 髙山功次郎

青空を使い放題運動会

 広島県 福山市立城北中学校 中1 河村文音

「先輩」と後輩の声桜咲く

 東京都 学習院女子中等科 中2 眞野琴子

夏空に打ち上げられた決勝点

 鹿児島県 鹿児島県立鹿児島工業高等学校 高2 中村元紀

 

◎入選

校ていのたこあげじぶんのたこはどれ

 富山県 高岡市立伏木小学校 小2 横 円花

先生のあいさつがすき秋のあさ

 東京都 江東区立第六砂町小学校 小2 ささきやすひと

父さんの玉はやすぎる雪合戦

 富山県 高岡市立伏木小学校 小3 向 一晃

進きゅうすクラスみんなの絵をかいて

 東京都 葛飾区立新宿小学校 小3 鈴木柚樹

「おはよう」と言った気がする葱坊主

 山梨県 学校法人駿台甲府学園駿台甲府小学校 小4 古屋璃佳

草むしりタンポポだけはのこしたよ

 岐阜県 大垣市立西小学校 小4 北村 樹

進級や教科書めくる三十人

 東京都 江東区立越中島小学校 小5 安達旺伸

金魚たち保護者みたいに見つめてる

 東京都 葛飾区立新宿小学校 小6 加藤祥太

雪だるまいつかは消える友達だ

 東京都 葛飾区立幸田小学校 小6 前川蒼馬

春の朝新品ノートに名前書く

 東京都 学習院女子中等科 中1 谷口由芽

しゃぼん玉吹いては思うもう大人

 東京都 学習院女子中等科 中1 鷲田なな美

ぶらんこを降りて決心十五歳

 東京都 八王子市立由井中学校 中3 糸井勇斗

夕焼けや友と誓った志

 京都府 宇治市立広野中学校 中3 竹本裕翔

初恋がガシャンと割れるソーダ水

 神奈川県 慶應義塾普通部 中3 瀧本孝太郎

不確かな進路を照らす朧月

 東京都 学習院女子高等科 高1 渡邊彩夏

制服のネクタイ正し啄木忌

 宮城県 クラーク記念国際高等学校 仙台キャンパス 高1 横溝惺哉

弟が「俺」使いだす春日和

 東京都 学習院女子高等科 高2 鈴木美裕

春の空デッドボールの初打席

 長崎県 長崎県立佐世保東翔高等学校 高2 岩永結芽

木の芽萌ゆサークルの鍵隠す場所

 愛媛県 愛媛県立松山東高等学校 高3 山根大知

花の雨ベスト四決め競り負ける

 東京都 学習院女子高等科 高3 吉田柚茉

 

土肥あき子 選

◎特選

春の雨わたしのかさも咲きに行く

 静岡県 静岡市立番町小学校 小3 紅林詩織

雪うさぎ目耳のこしてにげにけり

 福岡県 筑紫女学園中学校 中3 金子ひかる

鷹が描く円はコンパスより正しい

 奈良県 五條市立五條東中学校 中3 仲野拓未

マンションとマンションの間の盆踊り

 愛知県 名古屋高等学校 高3 浄土竜之介

さえずりや彩とりどりのランドセル

 茨城県 茨城県立結城第二高等学校 高3 加藤結衣花

 

◎入選

ジャングルジム一番上でさがす秋

 東京都 江東区立第六砂町小学校 小4 小竹凛々花

カーテンが呼吸している春の風

 茨城県 桜川市立谷貝小学校 小4 中原侑士

パッカンと卵のように木々の芽が

 東京都 葛飾区立こすげ小学校 小5 鈴木なつめ

風鈴がおいでおいでと風をよぶ

 東京都 目黒星美学園小学校 小5 髙橋咲耶

うんていの間に見える入道雲

 熊本県 玉名市立鍋小学校 小5 榎本悠希

ランドセルピカピカにして卒業す

 東京都 葛飾区立新宿小学校 小6 道端 綾

上ばきに穴二つあけ卒業す

 東京都 葛飾区立新宿小学校 小6 野村凰日

卒業や形決まらぬ雲の町

 東京都 台東区立忍岡中学校 中1 松本拓虎

青空を使い放題運動会

 広島県 福山市立城北中学校 中1 河村文音

一つだけ我が道を行く石鹸玉

 東京都 学習院女子中等科 中1 加藤優陽

青嵐暴れん坊の木々の影

 東京都 学習院女子中等科 中1 吉澤実優

「先輩」と後輩の声桜咲く

 東京都 学習院女子中等科 中2 眞野琴子

たんぽぽがおとなになって空の旅

 佐賀県 佐賀市立川副中学校 中3 江頭遼馬

どんぐりをたどって進む秘密基地

 佐賀県 佐賀市立川副中学校 中3 副島三裕

トーストの程よくこげて夏きざす

 愛知県 愛知県立安城高等学校 高2 田嶋怜花

朧月付箋あふれる参考書

 愛媛県 愛媛県立松山東高等学校 高2 岡本歩夏

菜種梅雨青が短い信号機

 愛媛県 愛媛県立松山東高等学校 高2 影山 翔

人間はただの邪魔物猫の恋

 東京都 学習院女子高等科 高2 日比野文香

囀や二次関数の五時間目

 愛知県 愛知県立豊橋西高等学校 高2 佐藤秋雅

春の空デッドボールの初打席

 長崎県 長崎県立佐世保東翔高等学校 高2 岩永結芽

 

望月 周 選

◎特選

まどのかぎまで手がとどくこどもの日

 岐阜県 大垣市立墨俣小学校 小5 大野成美

消しゴムがしゃきっとしてる四月かな

 東京都 江東区立第四砂町小学校 小6 須藤 丞

鷹が描く円はコンパスより正しい

 奈良県 五條市立五條東中学校 中3 仲野拓未

夏の空すんすんかおる塩素しゅう

 宮城県 大崎市立古川西中学校 中3 門眞颯杜

にのうでを初めて見たり南風

 東京都 東京都立江戸川高等学校 高3 小幡谷こはる

 

◎入選

まっしろなげんきをくれるゆきよふれ

 秋田県 八峰町立峰浜小学校 小2 とみやまゆうが

春のあさまどをあけたら二年生

 東京都 江東区立越中島小学校 小2 菅沼ゆいか

そうめんが水にながれてながされて

 東京都 葛飾区立幸田小学校 小3 原田おうが

わたしだけ古いブランコのっている

 徳島県 鳴門市黒崎小学校 小3 橋爪琴乃

あそ山のたきのどうどうおちてくる

 熊本県 荒尾市立中央小学校 小3 田上いおり

春風と一年生が学校に 東京都 江東区立第一亀戸小学校 小4 久保圭新

校ていが一番先に秋になる

 東京都 江東区立第六砂町小学校 小4 鴨志田羽奈

心配を消す雪あればいいのにな

 富山県 高岡市立下関小学校 小4 陸田詩織

さくらの木一ねんせいを見てゆれた

 東京都 港区立港南小学校 小5 スバシンハれん

夏ぼうしかぶって海の夢見るよ

 岐阜県 大垣市立静里小学校 小5 古田颯佑

エイプリルフール午前にうそをつかないと

 福岡県 福岡市立老司小学校 小6 岩下美優

小鳥来る止まったペンが走り出す

 東京都 江東区立第六砂町小学校 小6 山﨑奈々海

全員でやさしい蜂を怖がって

 神奈川県 日本女子大学附属中学校 中2 中原なな子

冬の風かばんの中に最低点

 福岡県 筑紫女学園中学校 中3 松嶋夏凛

出稼ぎに行く人雪の中に消え

 栃木県 那須塩原市立高林中学校 中3 田代大翔

練習と本番の汗しみた旗

 広島県 福山市立城北中学校 中3 奥山陸翔

夏の海深く潜れば父の声

 福岡県 糸島市立前原中学校 中3 山下咲良

思い人夏の月より輝いて

 福岡県 糸島市立前原中学校 中3 甲斐亜美香

郭公や隣にいない君が好き

 茨城県 茨城県立下館第二高等学校 高2 佐伯つぐみ

木の芽萌ゆサークルの鍵隠す場所

 愛媛県 愛媛県立松山東高等学校 高3 山根大知

 

【選考経過と選を終えて】

◆選考経過◆ 小島 健

 「ジュニアの部」は本大会が十一回目となります。コロナ禍にもかかわらず、ほぼ例年通り沢山応募をいただき、全国の小学校・中学校・高等学校の学校単位、あるいは団体、又は生徒さん個人から合計二四、五〇〇余句が寄せられました。(内訳は小学生/七五校八、八八三名、中学生/四七校四、二六三名、高校生/三一校二、二一五名、合わせて一五三校一五、三六一名、および幼稚園児三名です。)

 この全作品を次の選考委員六名によって、先ず予選を行い、通過作品三、一九一句を得ました。 浅井民子・鎌田 俊・菊田一平 すずき巴里・土肥あき子・望月 周(五十音順)

 次に予選作品を無記名(小・中・高の学年のみ明記)でプリントし、その中から同じく右の選考委員六名が各々、特選五句、入選二〇句及び佳作五〇句を選出しました。各委員の特選を四点、入選を二点、佳作を一点として採点した結果をもとに選考委員会で審議し、今年は八句を大会賞、三五句を優秀賞としました。

 また、応募数・予選通過数が多く、かつ予選通過比率の高かった学校の中から学校賞が十校、奨励賞が九校、合わせて十九校が選ばれました。

 ご応募くださった生徒さん、並びにご指導に当たられた皆様に、お礼申し上げます。

 

◆選を終えて◆菊田一平

 コロナ禍一年目の昨年は、応募総数が例年の三分の一だった。二年目の今年も出足が鈍いので応募句の落ち込みもやむを得ないのではないかと心配したが、最終的には例年と同様の二四、五〇〇句を越える応募があった。

 今年の応募句の特徴を簡単に言うと全体的に「俳句が上手くなった」の一言に尽きる。

 大会賞を受賞したそれぞれの句を小・中・高の順に見ていきたい。

 小学生は、〈「おはよう」と〉〈とびこむと〉の二句。従来、ジュニア俳句に顕著なのは、低学年層の句の、「ひよこがね」「ひばりがね」「あひるがね」が示すように、誰かに語りかけるときの「ね」が切れ字のように使われるのが特徴的だった。今回はこの「ね」を切れ字とする句が驚くほどに減った。冒頭の二句は、通学や授業風景を上手に切り取りながら、「いった気がする」「プールへこんで」など作者の感じたことが独自の言葉で表現されている。

 中学生は、〈雪うさぎ〉〈鷹が描く〉〈青空を〉〈「先輩」と〉の四句。

 中学生に限らず、小学生の上級あたりから、同じクラスで同じような発想の句が応募句の中に三句、四句と出てくることがしばしばあった。わいわい言いながら五、七、五と指を折っている授業風景が手に取るように伝わって微笑ましくもあったが、コロナ禍で三密を避けたり、モニター画面を見ながらの授業が続いているせいもあるのだろうが、そんなことも少なくなった。

 掲句の四句からも分かるように、「雪うさぎ」「鷹が描く円」などのように句材の幅も広がり、「目耳残してにげにけり」「使い放題運動会」と言葉を膨らませ、ストーリー性とでも言うような展開を生み出したり、「後輩の声」の後、「切れ」で一拍間を置きながら、下五の「桜咲く」に落とし込んだりと、俳句の骨法に倣いながら、感性を奔放に駆使して新鮮な一句に仕立て上げている。

 高校生は、〈はんだごて〉〈弟が〉の二句。

 「汗で濡れたる実習着」は、経験したものでないと言えない珠玉の措辞だ。同様に〈弟が〉の句の「春日和」には弟を見つめる姉の優しさが存分に込められている。どちらの句も大人の句と並べても遜色がないくらい見事に俳句たり得ている。

 この上手さは何だろうかと思うと、すぐに浮かんで来るのがテレビの「俳句番組」の盛況だ。夕飯を食べながら家族で俳句を話題にしている和やかな景が浮かんで来る。

 さらには、大賞句の小・中・高句のそれぞれ一句ずつに、「おはようと」「先輩」「俺」などの「」付きの句があったことは特筆に値する。これはコロナ禍でスマホの映像や音楽をイヤホンを付けて視聴することが増えたことと無関係ではないのかもしれない。ジュニア世代を中心とした若い世代の人たちが「音」や「声」に敏感になっていることの表れではないだろうか。

 「コロナ以前コロナ以降」の区切りが、俳句の世界にも確実に押し寄せているのではないか。ジュニア俳句を読みながらそんなことを思ったりした。